研究概要 |
利用した実験装置によって発生した渦輪は,レイノルズ数によって波状変形の様子が次のように変わることが観察されている.(1)Re数=800以下:波状変形は現れない.したがって,乱流遷移せず円形のまま徐々に渦度が散逸していく.(2) Re数=1400:波の数が6の波状変形がゆっくり現れるが,波の数はそれ以上減少しない.外乱にとても敏感で再現性が悪い.(3) Re数=2000:これ以上のRe数において波の数の減少が認められた.乱流化する直前まで,周方向に均等に振幅が大きくなり波の崩壊も全体に起こる.(4) Re数=2600〜4600:波が崩壊する直前に一部分で振幅が特に増大し,その部分から崩壊する.その後全体に乱れが伝搬していくように観察された. また,ここで観察されている比較的低いレイノルズ数の場合の波状変形は,second radial modeと呼ばれており,波状変形した渦線の構造は回転中心近傍とその周りで位相が180°ずれた複雑な形状をしていることが確認された. そして,(4)の2600以上のRe数の場合において,不安定波が現れてから軸流(axial flow)と呼ばれる渦核内での周方向の流れが観察された.まだ,十分明確には捕らえられていないが,現在までの観察からこの軸流が波の振幅を減少させる働きをする可能性があることが分かった.崩壊直前の不安定波の形状はこの軸流と密接な関係があると考えられることから,今後この軸流についてさまざまな可視化を試みる予定である.
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