研究概要 |
単独渦輪は,初期の段階では安定した並進運動をするが,やがて,渦輪を構成する渦核に正弦波的な微小な変位が周方向に生じてくる.この現象はWidnall instabilityと呼ばれ,増幅する波の周期が渦核と渦輪の直径の比に応じて変化する.その後,時間の経過とともに波の振幅は増大し,局所的に周方向の規則性が崩壊すると全体が急速に乱流渦輪へと遷移していくことが知られている.本研究の目的は,波の形状の変化に注目し,この乱流渦輪への遷移の様子を明らかにすることである. 昨年度までには,波状変形から崩壊までの様子がレイノルズ数によって分類され,レイノルズ数が2600から4600の間において乱流遷移する前に軸流(axial flow)と呼ばれる渦軸に沿った周方向の流れが現れることが観察された.また,この軸流は波の振幅の増大を抑える働きがある可能性があり,波の振幅の大きくなった崩壊前の層流渦輪の渦構造と密接な関係があることが推測された. 本年度では,スモークワイヤ法と煙可視化法を併用することにより,渦核の形状と軸流の発生の様子を同時に観察することを試みた.その結果,非軸対称的で局所的に波の振幅が増大する場合は,最も振幅の増大した箇所に向かう軸流が現れることが観察された.これは,振幅が増大することで渦管が引き伸ばされ,周方向に圧力勾配が発生したためと考えられる.また,軸対称性がよく周方向に均一に振幅が増大した場合には,時計回りもしくは反時計回りのいずれかの方向に流れが生じることが分かった.しかしながら,この場合についてはまだ十分に試行的な実験が進んでおらず,そのメカニズムの解明には到っていない.
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