脈動流の振動流量波形による移動促進を調べるために、現行の実験装置がそのまま使用可能なくぼみ付き流路を用いることにした。過去の研究において、くぼみ付き流路においては比較的低いレイノルズ数の条件で、系の自律振動数に近い振動数を持つ強制振動流を加えた時に熱・物質移動が著しく促進される"共鳴促進現象"の存在が報告されている。強制振動の波形を変えた時にこの現象がどのようなに変化するかということは移動促進法を考える上で重要であるので、まずこれについて検討した。既往の研究は、自律振動数はストローハル数表示で2付近であり、正弦波状変化の場合はこの値付近で主渦強度にピークが見られることを示している。本研究では非定常成分として5次関数を用いて正弦波の場合よりも急激な流量の増減を与えたが、この場合にもストローハル数が2付近で主渦強度の急激な増大がみられ、共鳴現象の出現が確認された。また、圧力損失に対する検討は、振動波形を変えても圧力降下の値はそれほど増大しないことを示している。この結果は波形を変えることで、所要動力を増大することなく熱・物質移動や流体交換を促進できる可能性を示唆している。 また、可視化実験においては、LDV計測装置やPIV解析ソフトウェアの導入により、実際の流路における速度ベクトルを画像処理によって得ることが可能になった。今後は、画像処理や圧力変換器を用いて流路内流れの定量的計測を行ない、強制振動流の振動波形による変化を調査する。さらに、振動波形が熱・物質移動や流体混合にあたえる効果を検討する。
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