研究概要 |
床に堆積した粉塵層上を衝撃波が伝播する際,粉塵層と床面との境界における圧力が入射衝撃波背後の値の数倍に達することが知られている.この粉塵層と衝撃波との干渉による異常高圧の発生機構を明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を行った. 1.多数のスリットを有する平板を隙間を設けて層状に配置した多孔板層を衝撃波管観測部床面に設けたキャビティ内に置き,衝撃波がその上を伝播・干渉する様子を影写真法により可視化することによって,透過性媒質である粉塵層内における衝撃波の伝播機構を調べた.その結果,複雑な反射・回折を経験した衝撃波は多孔板層内で一つの波面を形成するがその伝播速度は層外を伝播する衝撃波よりも遅いことがわかった.さらに,スリット平板を1枚だけ設置した場合に対して数値シミュレーションを行い、実験で観測された波面形状を再現できることを確認した. 2.球形粒子で粉塵をモデル化して衝撃波管観測部床面にモデル粉塵層を設置し,衝撃波と干渉させた際の粉塵層下での圧力測定実験を行った.実験では,球形粒子径,密度,粉塵層厚さ,入射衝撃波マッハ数をパラメータとし,粉塵層下での圧力に及ぼすこれらの因子の効果を調べた.その結果,(1)粒子径が小さくなる程,また粉塵層が厚くなる程,粉塵層内を伝播する気体圧力波の速度が遅くなること,(2)入射衝撃波背後の圧力に対する粉塵層下での最大圧力の比は,入射衝撃波マッハ数が大きくなる程大きくなり,粉塵層厚さが5mmの場合よりも10mmの場合の方が大きな値となること,(3)実験の範囲内で,粒子径の違いによって最大圧力に有意な差は認められなかったこと,(4)粒子密度が大きくなると粒子によって伝えられる圧力派の伝播速度は小さくなること,等の知見を得た.
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