研究概要 |
YAGレーザ(波長1064,532,355,266nm,発振周波数10Hz)をポリマー試料(ポリエチレンテレフタレート(PET),二軸延伸)に照射し,加工痕を形成させた.照射パワー密度は10^<11>〜10^<12>w/m^2の範囲とした.この加工痕の3次元表面形状を表面粗さ計で計測し,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行った.レーザ波長が1064,532nmでは熱的に加工される様子が見られたが,355,266nmではより鋭利な縁をもつ加工面が得られた.以下では特に第四高調波(紫外線266nm)の場合を説明する.周囲気体の種類(空気,窒素,酸素),圧力(1〜760Torr),ポリマー試料温度(25〜150℃)に着目し,周囲雰囲気との化学反応,ガラス転移点(PETで70℃)と試料温度の関数が物質除去に及ぼす影響を調べたが,加工体積に差は見られなかった.また,加工面および加工時の飛散物をSEMにより観察した結果,加工面では二次元的に配列した粒状突起が加工の進行とともにサイズを大きくした(無延伸の場合には加工面は平坦であった).また,物質除去における飛散物はサブミクロンの直径を持つ粒子として,加工面から悲惨していることが加工面周囲に堆積した悲惨物の観察からわかった.レーザ照射前に熱処理(220℃で30分または5時間)を行うと,突起形状が一次元縞状に変化した.これは,熱処理により分子配向が一軸方向へ偏ったためと考えられる.また,二軸延伸熱処理材料および無延伸材料の飛散物は繊維状になっており,二軸延伸熱処理の場合との違いが確認された.密度測定による結晶化度は熱処理により増加しており,分子配向や結晶化度といった分子構造の変化が加工面性状に影響することが分かった.
|