大気圧下非平衡プラズマでは、約100℃の温度上昇でも、プロセスの効率が低下するにも関わらず、その伝熱機構に関する考察は皆無に等しい。特に沿面放電は、固体壁との相互作用を積極的に利用することで、熱・物質移動においても制御自由度の高い非平衡プラズマ場を実現できる高いポテンシャルを有している。そこで今年度の研究では、軸対称衝突噴流による強制対流下で沿面放電を形成し、誘電体に伝達された熱流量を測定し、伝熱機構について検討した。さらに、ナフタレン上で沿面放電を形成し、ナフタレンの昇華量の測定を試みた。本研究で得られた主な結果を以下に示す。 1.沿面放電の外観観察 電極間で均一な発光が観察され、放電電力の増大とともに、発光領域も拡大する。窒素噴流では、空気より遥かに強い発光が確認された。 2.固体表面の帯電電荷極性と帯電量 ガラス板に帯電した電荷量は、放電維持電圧、ガラス板の厚さにより制御できるが、周波数のおよぼす影響はほとんど見られなかった。 3.電圧-電流特性の評価 放電維持電圧(=電圧実効値×力率)を用いることで、放電電力、電流など、プラズマの電気的特性を評価できる。 4.全熱流速の測定 放電電力に占めるガラス板への伝熱量の割合は、Re≒30000でほぼ一定になる傾向が見られた。空気噴流の場合、Re=22000で約87%、Re=42000で約64%となった。窒素噴流の場合、オゾン生成に伴う吸熱がないにも関わらず、ガラス板への伝熱量は減少した。熱流量が占める割合は、Re=22000で約68%、Re=42000で約47%である。ガラス板への伝熱量はレイノルズ数に強く依存して変化し、放電維持電圧、周波数がおよぼす影響は極めて小さい。 5.固体表面からの物質移動の評価 ナフタレンの重合反応により、表面に極めて薄い重合膜が形成され、これがナフタレンの昇華を阻害したため、正確な昇華量を測定できるに至らなかった。
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