研究概要 |
団体表面間の接触熱抵抗は,熱工学のもっとも重要な課題のひとつである.実在表面はあらい微視形状をもち2つの表面は点接触する.接触点は力学的に圧縮され変形する.そのため,接触点を通る熱の流れは,均質な連続体中におけるものとは異なる.研究代表者は,この接触熱抵抗について,分子動力学モデリングを試みてきた.この研究は,実在の工学系にある固体が原子の集合体としてどのようにモデル化できるかに係るものであるが,まず,この点を固体表面間の接触熱抵抗の固体力学的な要因に注目して研究した.接触熱抵抗の物理を扱うMD研究では,原子系の圧縮が重要である.また,その問題において境界条件に現れる圧力を制御することの原子系の圧縮が重要である.さらに,熱運動は,MDのオーダの単結晶系にも協力現象としての起こるすべり変形の素因となるものであり重要である.そこで,非等方的に加圧されて弾性変形・塑性変形する接触点のMDモデルを提案し,固体表面間の接触熱抵抗の系統的な研究のために,その原子系の挙動を調べた.つぎに,有限サイズの原子系における熱の流れに注目した.接触点を1012個の原子からなる柱状のAr原子の系としてモデル化し,その上下部がステップ状に加熱・冷却される際の温度分布と熱エネルギーの流れあるいは熱力学状態量の過渡挙動を計算した,さらに,有限の微小サイズの原子系の熱物性値(質量密度・定圧比熱容量・熱伝導率・熱拡散率)の推算を試みた.今後には,有限系における力学的変形と熱伝導の関係を検討しなければならない.
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