研究概要 |
溶融金属ジェットの液体急冷凝固法の一つである回転液中紡糸法により,優れた機械的・磁気的性質のアモルファスや微細結晶構造の金属細線が製造されている.しかし,製造可能な細線の直径や合金組成は限られており,その範囲を拡大するには製造プロセスにおける冷却速度の大幅な増大と伝熱促進制御法の確立が望まれている.本研究は,基礎実験により提案された伝熱促進制御法を実際の製造プロセスに適用して,その効果を実験的に明らかにすることを目的としている. 本年度は,磁性材料として利用されているFe_<77.5>Si_<7.5>B_<15>(at%)を用いて水温(10〜50℃)およびドラム回転速度とジェット速度をパラメータとした実験を行った.実験では,水中の金属ジェットの輝度分布から冷却速度を推定し,冷却速度が製線条件および細線の微細結晶構造に及ぼす影響を調べた.得られた結果は以下の通りである. (1)水中でのジェットの表面温度は1150K以上の領域ではほぼ直線的に低下し,ジェット後流部に形成される蒸気(空気)シートがジェットからはく離した後も大きな温度変化は認められない. (2)水中でのジェットの平均冷却速度は水温が高くなるにつれて低下し,水温が30℃および50℃の場合にそれぞれ6×10^4K/sおよび4×10^4K/s程度であった. (3)製造された細線の結晶化熱量およびX線的非晶質度はジェットとドラムの相対速度の影響を強く受けており,水温が高いほどその影響が顕著に現れる. (4)ジェット速度とドラム速度との関係で表される連続細線製造条件は,水温が高いほどその範囲が狭くなる.また,水温が高いほど表面がざらついた曲がりくねった細線が得られるようになる.このような細線には結晶質が観察され,水中のでのジェットの座屈による形状の変化がその後のジェットの冷却速度および凝固組織に影響を与えていると考えられる.
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