研究概要 |
当量比が大きい条件下における炭化水素火炎中に多く存在するC_2H_2およびH原子に注目して,火炎中の多環芳香族化学種の生成についてGaussian94 分子軌道プログラムを用いて検討し,以下のような結果が得られた. 1.最初の芳香環の生成について,まずC_2H_2+H→C_2H+H_2が生じる.次に,C_2H+C_2H_2→ブタジエンのビラジル.このブタジエンのビラジカルはtrans型かcis型かの可能性があるが,trans型の方が芳香環の生成に関与する可能性が高い.Trans型ブタジエンのビラジカルの脱水素反応によって生成する1-ブテン-3-インはC_2H_2と反応し,環状構造の化学種を生成する.この環状中間生成物の脱水素反応により,最初の芳香環としてフェニルラジカルが生成する. 2.3個のC_2H_2分子からベンゼン環が単一反応によって生成する可能性もあるが,その反応は活性化エネルギーが大きく,C_2H_2の火炎中でも速度が小さい. 3.フェニルラジカルにC_2H_2が付加することによって生成するスチリルラジカルが,引き続き脱水素反応を起こし,エチニルベンゼンが生成する.さらにC_2H_2が反応すると,二つの環をもったラジカルが生成する.この化学種の脱水素によって第2の芳香族化学種としてナフタレンのラジカルが生成する. これらの結果から,C_2H_2およびH原子だけでは五員環が生成しにくく,O原子やOHラジカルの関与も考慮する必要があることが考えられる.
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