拡散火炎の本質を把握する上で、分子拡散作用による燃焼過程から火炎構造を理解することは、微視〜巨視的火炎構造の燃焼特性を明らかにする上で、極めて興味深い。特に、本研究で開発されたマイクロバ-ナ直径上に形成された拡散火炎(マイクロフレームと呼ぶ)は、定常拡散火炎が形成可能な下限レイノルズ数を具体的な数値で定量化することができ、分子拡散作用による火炎形成限界を明確にすることができた。これらの研究成果は、微視的拡散火炎構造からの燃焼限界や燃焼範囲等の物理的燃焼特性を詳細に説明するに留まらず、分子レベルでの燃焼工学的考察による深い議論を可能にする。また、近年機械制御分野では、マイクロロボット本体の研究開発は邁進しており、そのマイクロ・ツールとしての利用方向も十分に考えられ、工学・医学等の各分野に大きな成果が期待できる。本研究では、通常のマイクロフレームをさらに微小並びパルス化し制御する目的のために、マイクロバ-ナによる2重管を製作し、マイクロツールとしての拡散火炎の燃焼特性を直接撮影法により可視化し、その可能性を示唆した。2重マイクロバ-ナは、中心バ-ナから62.2%H_2+ 37.8%CH_4混合燃料を、周囲バ-ナからH_2燃料を噴出することにより、拡散火炎を形成した。形成された拡散火炎の直接撮影を行った。この火炎では、2重拡散火炎が形成されていることがうかがえる。周囲バ-ナには、水素拡散火炎を形成させているため、単独燃焼ではOH発光(306.4nm)のため直接撮影法では可視化できない。この結果、中心バ-ナからの混合燃料中のメタン燃焼によるCHバンド発光がOH発光と重なるため火炎の存在が可視化できることを示している。2重に観察される内側の火炎輪郭は、中心バ-ナからの水素燃料による火炎領域を表しており、その外側には、周囲バ-ナからの水素燃料による火炎領域が広がっている。この方式により単純バ-ナ時の拡散火炎長さ(1=3.48mm)の1/3の拡散火炎を形成できることを示した。これを利用することにより単純バ-ナで形成不可能な微小拡散火炎と安定した拡散火炎を実現でき、マイクロツールとしての火炎を実現できる可能性を示した。
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