研究概要 |
大型の低温機器の冷却において冷却時間を短縮するためには,冷却流路の圧損の制限から並列冷却流路を選択せざるを得ない。しかしながら,低温機器の冷却においては,温度の低い方の密度が高くなり粘性係数が小さくなるために,先に温度が低下した流路にはより多くの冷媒が流れて益々温度差が拡大する不安定性が存在する。並列流路間の熱伝導が大きい場合には、この温度不安定性は現れないことが実験的に示されているが、定量的な研究は行われていない。本研究は並列流路の温度不安定性と流路間の熱伝導の関係を明らかにすることを目的としている。今年度は、並列流路間の熱交換を考慮した平衡温度の計算プログラムを作成し、冷媒にガスヘリウムを使用する場合について評価を行った。 ガスヘリウムの物性値は温度と共に緩やかに変化するので、入口温度と出入口の圧力差が一定の場合の冷却能は出口温度に対して単調増加であることを明らかにした。即ち,侵入熱に対して平衡温度は1つだけ存在することになり,液相と気相が混在する場合のような平衡温度の不安定性は存在しない。続いて、各並列流路の侵入熱に偏差がある場合には平衡温度の評価方法を研究した。例えば入口温度40K/出口温度85Kを標準とする冷却系統において、2倍、3倍の侵入熱がある場合の出口温度は,各々150Kと220Kとなる結果が得られた。無次元化は今後の課題である。更に、隣り合う並列回路間で位置をずらしながら部分的に熱交換をする効果を評価した。この場合には均温化以外に平均温度が上昇することが判明し、熱交換させる位置を最適化する必要があることが判明した。定式化は今後の課題である。
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