研究概要 |
機械構造物からの放射音を低減するためには,構造物表面の振動を抑えることが有効とされる.そのため,構造物にリブ補強し剛性を上げたり,振動振幅を抑えるために制振材を貼付するなどの対策が施される.しかしながら,それぞれの対策の減音メカニズムが明らかになっていないために,施行に際しては経験によるところが大きい.そこで本研究では,構造物から振動放射音低減効果を予測する手法の開発を目的とする.本年度は特に構造物から音への基本的な変換メカニズムを明らかにすることを目指した. はじめに,剛性増大を目したビ-ド加工された鋼板を試験片として,ビ-ド幅,ビ-ド深さ,板厚さらには制振材の有無をパラメータとして,構造物による放射音の変化について実験的に検討を行った.ここでは,構造物の振動特性を表す内部損失率と振動から音への変換特性を表す放射係数の観点から考察を行った.その結果,ビ-ド加工することによって放射係数は増大し,振動が音へ変換しやすくなること,振動は制振材の貼付によって抑えることができるが,ビ-ド加工によって制振材の効果はなくなってしまうことが明かとなった.また,放射係数の増大と制振材による振動低減の兼ね合いで放射音が決定されるため,それぞれの効果を予測する必要性を確認した. 次に,実験と同様に数値計算によって放射メカニズムの検討を行った.結果として,平板であれば構造物の曲げ波と音の波長の関係で生じるキャンセリング効果が,ビ-ド加工することによって効かなくなっていることが明かとなった.また,各構造物の放射特性には静的特性と何らかの関係があることが分かった. 以上のように,本年度は構造物から音への放射特性について検討したが,来年度は放射係数や内部損失率の周波数特性を簡単な実験,数値解析データを元に記述し,容易に放射音低減効果を予測する手法の提案を行う予定である.
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