研究概要 |
本研究課題では,タンクの内壁面を撮影するカメラなど,長い鋼索で吊り下げられた物体の球面振子としての振動を抑制するための制振装置について,受動形ジャイロ機構の応用という観点から研究している.平成9年度は基本的な機構構成について検討した.具体的には,理論解析と,数値シミュレーションにより,ローリング,ピッチングを抑制する単一ジンバル機構のジンバル軸の配置方向を検討課題として取り上げた.少なくとも2台のジンバル機構が必要と考えられ,これを4台にすればスピルオーバの問題はほとんど解消する筈である.しかし,台数を減らした極限での設計が工学的な観点からは興味深い.そこで,2台とすると,ジンバル軸をヨ-軸に垂直,例えば,ローリング,ピッチング軸と平行なものとするより,ヨ-軸と平行にする方が有利という結果になった.機構的な条件から,対象とする系のヨ-軸まわりの慣性モーメントは,ローリング,ピッチング軸よりかなり小さいと推定される.ヨ-軸と平行にジンバル軸を配置してローリングを抑制させると,そのスピルオーバはヨ-軸まわりに作用する.しかし,ヨ-軸と垂直な方向に配置しておけば,スピルオーバは主としてピッチングとローリングの相互干渉として生じ,ヨ-軸まわりへのスピルオーバは微弱なものとなる.仮に,スピルオーバが作用しても,他方のジンバルが動作するから全系に大きな影響は生じない.しかし,ジンバルに接続された回転ばねと回転ダンパを介してヨ-軸回りへトルクが作用することには注意すべきである.鋼索をねじりばねとした重錘の回転振動を抑制するには,何らかの制振装置を付加する必要がある.これには,小型の受動形ジャイロ機構を双対形で追加するなどの方法が考えられる.別の方法として能動形のジャイロ機構(CMG)により,ヨ-軸周りの回転角速度,方位角を自在に制御可能とすることなどが考えられる.本研究においては,実験的な検証も計画しており,本年度は単一ジンバル機構による小型の受動形ジャイロ制振装置を6台製作した.来年度は,これらの一部,あるいはすべてを球面振子に取り付けることにより,受動形ジャイロ制振機構による実験を予定している.
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