本研究は、目的に応じて形状が変化する構造物の動力学解析を目指し、その基礎研究として、アクチュエータ部のばね、減衰特性をモデル化することを目的としている。そこで最初に、構造物に使われるアクチュエータについて調査を行い、それらの種類、用途、特徴を次の様に明らかにした。アクチュエータはエネルギ源の違いにより、電動、油圧、空気圧の3種類に分けられる。電動システムの特徴は、エネルギ・信号の伝達が電気配線によって行われるため、融通性が高い。高い応答特性が得られる。直線運動が困難である。油圧システムは、発生トルク、力が大きく、応答性が高い。制御性が良好。油もれ、高速性に問題がある。油圧タンクなどスペースが大きい。空気圧システムは油圧システムと類似しているが、空気の圧縮性によって低速域での連続的な速度制御や、高精度の位置決めが困難である。本研究では柔軟で比較的計量な構造物を対象とするため、電動アクチュエータに注目する。 モデル化を行うにあたり、DCサーボモータを対象とした。これは、産業用クレーン等でDCサーボモータが使われているためである。サーボ系のブロック線図から、伝達関数を求める。この伝達関数は2次遅れ系となり、ばね、減衰要素が含まれていることを示している。そして、このばね、減衰特性に関係するパラメータは、モータのトルク定数、逆起電力定数、インダクタンス、電気子抵抗、フィードバックゲイン、慣性モーメント、アンプ定数であることが分かった。 一方、柔軟多体系の動力学解析を行うにあたって基本となる、梁要素の動力学解析プログラムを作成した。ここでは節点座標として梁要素両端の初期状態からの並進座標、角度が必要となる。アクチュエータで回転駆動を与える場合、アクチュエータの回転角度はジョイント部分の相対角度であるため、動力学解析を行うとき、角度の変換を行わなければならない。このような改良を加えて、今後アクチュエータのばね、減衰特性を含めた構造物の動力学解析のシミュレーションプログラムを作成する。また、実験による検証を行う。
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