研究概要 |
(1)ピッチ幅が120μmのマイクロピッチラックと,(2)これに噛み合う駆動ブロック,(3)駆動ブロックをマイクロピッチラックに尺取虫方式で噛み合わせるための弾性ヒンジ板,(4)微動テーブルの基台,(5)テーブル上板,を各々設計・試作し,(5)これらと2本の直動案内を組合わせて微動テーブルを試作した.試作の過程で,マイクロピッチラックの歯部を,合金工具鋼(JIS SKD11)をワイヤ放電加工機で半円状の凹部に加工し,また,駆動ブロックの歯部を,超硬(JIS WC3)を精密研削盤で半円状の凹凸部に加工することで,それぞれ製作した.また,各々の部品を組立てる際に,各々の部品を位置度で±2μm以下,平行度で±2μm以下の精度で組立てないと,駆動ブロックがマイクロピッチラックに正確に噛み合わないことが分かり,高倍率な顕微鏡視野内で各々の部品を組立てることで,精密組立を実現した.弾性ヒンジ板の内部には積層型圧電素子を組込み,圧電素子駆動ドライバを製作,さらに,駆動ブロックが1ピッチの1/2(60μm)ずつ尺取虫方式で移動する動作プログラムを製作して,テーブル上板を60μmずつ尺取虫方式移動させることを実現した.位置決め実験では,120μmごとにテーブル上板が精密に位置決めされることを確認したが,60μmずつの精密な位置決めは実現できなかった.これは,弾性ヒンジ板の湾曲によるものと考えられ,次年度改良することにした.本研究の目標であるピッチが10μmのマイクロピッチラックを用いた微動テーブルの試作は,このピッチのラック歯を加工できなかったので,行わなかった.しかし,1μmピッチで加工された回折格子をマイクロピッチラックとして用いることを思いつき,回折格子を噛み合わせた精密ステージの試作を行った.本年度は,ステージの設計と製作に留まったが,手動による噛み合わせ実験によって,回折格子を尺取虫方式で噛み合わせながら位置決めする精密ステージが実現可能であることを確認した.
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