研究概要 |
本研究は,現在未確立であり,今後の層間設置型制振装置の普及の観点で重要な問題と思われる装置を建物に適用する際の最適設計方法および配置選定システムの開発を目的とするものである。層間設置型制振装置の最適配置法の検討で問題となるのは,最適配置法の定義,使用装置数と建物階層数の増大で配置組み合わせが指数乗に増加すること,そして,最適配置が構造物の動特性や設計条件,解析時の入力波に依存することである。このため,最適配置を行う際には,まず,なんらかの高速かつ柔軟性を有した最適化アルゴリズムが必要となる。本研究では遺伝的アルゴリズムを用いている。本年度は,超高層建物を想定した40層建物モデルに1000体の層間エネルギ吸収型制振装置を配置する際の配置問題を検討した。特に様々な入力波に対して複数の設計要求を満たすような,入力波に対して高いロバスト性を有する最適配置方法を検討した。設計要求としては,建物全層を対象とした最大層間変位の低減,建物に使用する制振装置数の削減,そして,単位装置当たりの平均エネルギ消費量の増加である。これらの設計条件を用いることで,制振効果,経済性,配置効率を評価する。なお,最大層間変位は,耐震安全性の観点から用いた。実際の設計段階では,任意の降伏荷重を設定することにより,建物応答を弾性範囲内に押さえるような設計条件を想定したものである。対入力波ロバスト性に関しては,最大速度25kine,1秒から6秒までの周期成分での速度応答スペクトルが一定となる人工地震波を用い,建物の低次モードを励起することにより,他の入力波に対して高いロバスト性を有する適正配置の生成を目的とした。結果より,解析対象建物の低次モードを励起する人工地震波を用いて最適配置を検討することにより,他の入力波に対しても設計要求を満たすような対入力波ロバスト性を有した最適配置が得られることを明らかにした。
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