前年度において適用対象としていた走行型クレーンは1方向に可動方向を限定された1自由度クレーンであった。本年度は、まず、実用に則した2自由度クレーン実験システムに対して適用可能な形式へSAC理論を拡張することを検討した。 (ア) 2自由度クレーン系のモデル化 2自由度クレーンの走行台車を直行する2つの可動台車によって構成されるシステムとして設計し、その数式モデル化を行い2人力4出力8次線形モデルを得た。さらに、1人力2出力系の並列結合系であることを導出した。 (イ) SAC系基本構造設計 上記の結果を踏まえ、入出力数の異なる系に対する安定化制御方式によるSAC系の設計を行った。その結果、制御系の可調整パラメータが最低14個となることを明らかにした。 (ウ) 遺伝アルゴリズムを用いたSAC系設計パラメータの最適調整法 前年度の結果を踏まえ、上記の14個にのぼるパラメータをGAによる最適調整を試みた。 (工) シミュレーション実験 シミュレーションを行うことで1自由度系に対して得られた結果と同等の制御効果を確認した。 以上で得られた結果については、日本機械学会岡山地方講演会、ならびにJSME Inter national Journalで報告した。 上記の結果を踏まえ、実機への適用実験を行った。シミュレーションで無視した非線形モデル項などへの対策について再検討の必要性があるが、ほぼシミュレーションの結果と同等の良好な制御性能が得られることを確認した。
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