研究概要 |
将来,発展が期待される福祉機器,リハビリ機器,生活・労働支援機器といった装置は,人間に接近した場所で働くため,ある程度のコミュニケーション能力が必要である.人と機械のより自然なコミュニケーションのためには,言語によらず意識にも現れないレベルの動作が重要であるというのが本研究の立場である.研究の初年度となる本年度は,非言語無意識レベルのコミュニケーションに関する調査と実験環境の構築を行なった. 実験環境は外界の刺激に反応するロボット,それを見た人間の反応を測定する生体計測系からなる.ロボットには人間の腕の動きを模倣させるのに都合が良い,6自由度マニピュレータを用いる.生体計測にはポリグラフを用い,この出力をパーソナルコンピュータに取り込む.ポリグラフは電極を交換すれば筋電位,脳波,脈波などの計測可能である.パソコンへのデータを取り込み、これを解析するプログラムは自作した. ロボットで実現すべき動きについては人間の反射行動原理にもとづき選定した.人間の複雑な反射行動は,生得的な無条件反射と生後の経験で形成される条件反射に分けられ,下位の反射を上位脳が修飾する階層的な構造をとっている.ロボットに無条件反射にあたる基本的な行動を与えておき,これらを組み合わせることで,外界からの刺激に反応する機構をつくる.現在,ロボットに与える具体的な動作を検討中であり,この点に関する具体的な成果はまだない. 人間の反応の計測であるが,ストレス評価などでよく利用される生体信号に筋電位,脈波,心電図,血圧などがある.人間の外部刺激に対する反応は主に神経系とホルモン型に支配されるが,一般に神経系の方がホルモン系よりも反応が速い.そこで本研究では,神経系の筋電位を計測に用いることにした.ロボットの動作を実現後,具体的な測定・評価を行なう予定である.
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