研究概要 |
本研究では,21世紀初頭に想定される月・惑星の無人探査を行いうる遠隔支援型の自律走行ローバーに関する基礎研究を行った.ローバーのハードウェアテストベッドとそれに対応する力学シミュレーションおよびグラフィクスモデルを用いて,月・惑星上の不整地における走行ダイナミクスおよび地球とのコミュニケーションがきわめて疎である環境において実際に機能しうるテレオペレーションの方法について研究を行った. 平成9年度に,不整地走行性能が高い6輪連節車輪走行ロボットを採用した,全長およそ1mのローバーテストベッドを製作した.本ローバーはステアリングのための専用自由度を持たず,節間の連結も受動関節とすることにより,構造の単純化および軽量化をはかっている.同ロボットの上には,マルチプロセス,マルチタスクが可能で,リアルタイム割り込みが可能なRealtime-Linux OSを採用したボード型PCを搭載した. 平成10年度には,タイヤの力学および連接シャーシの力学を検討することにより,左右の車輪の速度差とローバーのステアリング制御角の関係を明らかにし,オペレータが角度コマンドを指示することによりステアリングを行う制御インターフェースを構築した. また,砂上ではタイヤが空転をはじめると穴を掘って沈み込んでしまい,前進も後進もできない状況(スタック)に陥ってしまう.この様子を明らかにするため,タイヤの速度,加速度とスリップおよび牽引力の関係を詳細に検討し,(1)タイヤの加速度の大きさをあるしきい値以下にすること,および(2)スリップを検出した際には車輪の回転速度を落とすこと,によりスタックを回避できることを明らかにした.このスタック回避のための制御則をローバーの自律機能としてオンボード計算機にインプリメントすることにより,オペレータはスタックを気にせずにステアリング等の走行指令を与えることができる.
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