研究概要 |
平成9年度では制御工学の立場から眼球運動システムの学習モデルを構築し,さらにそのモデルを基にした双眼視覚装置の視軸調節運動の制御システムについて研究を行った.具体的手法は以下の4つの段階を踏まえて行った. (1)前庭動眼反射に限らず生物の眼球運動に見られる衝動性,滑動性,視機性などを正確に実現できるようにな眼球運動制御システムを統合的に構築し,その動特性や周波数特性をシミュレーションを用いて検討した.この研究で明らかになったことは以下のとおりである. (i)眼球運動制御は一つの統合的な運動制御システムで表現することができる. (ii)衝動性,活動性,視機性などの眼球運動はそれぞれ,この統合的な眼球運動制御システムの特定環境と条件下の一つの特性にすぎない. (2)解剖学的に存在し,生理学的にもその機能が確認されている前庭動眼反射の環境に対する適応機能に注目し,その適応機構に当たる部分の学習則を提案した.この研究により,生物の眼球運動システムには,従来の制御工学では一般的ではない2つの学習機構が同時に存在する制御システムからなることを示した.さらに,シミュレーション実験を用いてその有効性を確認した. (3)提案した眼球運動制御モデルを用いて、生物の異常眼球運動の局在診断や異常の原因調査について検討しその可能性をシミュレーション実験を用いて確かめた. (4)人間の両眼の運動機能により近い特性を備えた両眼視軸調節装置を製作し,上述のモデルの原理を用いて制御を行った.
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