研究概要 |
パラレルリンクマニピュレータはコンパクトな構造ながら多自由度を有し,接触作業を行うロボットの手先効果器として期待されている.本研究では,空気圧シリンダをアクチュエータとするパラレルリンクマニピュレータを試作し,空気固有の柔らかさを積極的に活用することで,本質的に安全かつ柔軟な対人間型ロボットシステムの構築を目的としている. 対象物との接触作業において接触反力の測定は不可欠である.通常は専用のセンサーを必要とするが,マニピュレータ自体の構造を複雑化し,また,力の検出点がセンサの場所に拘束されるという問題を生む. 本研究では,力センサーを用いずにマニピュレータに作用する接触力/モーメントの検出を行う.アクチュエータに空気圧シリンダを用いているため,空気の柔らかさに起因して、マニピュレータは位置制御系を構成した場合でも,一種の弾性体として機能する.よって,マニピュレータの弾性特性,すなわち機械インピーダンス特性が既知であれば,外力/モーメントによって生じたマニピュレータの変位から比較的簡単なアルゴリズムに従って外力/モーメントを検出できる.対象物との接触時には,対象物とマニピュレータの相対的な運動パターンが幾つか考えられるが,これらは位置制御系の目標値と実際の位置/姿勢変位を時変,または時不変に設定することで対応できる. まず,リンク単体の機械インピーダンス特性をFFT解析して伝達関数を同定した後,マニピュレータに作用する外力/モーメントを検出した.対象物とマニピュレータの種々の相対運動パターンに対してほぼ満足のいく推定結果が確認された.また,推定力/モーメントに基づいてコンプライアンス制御系を構成した結果,力センサの信号を使用した場合とほぼ同等な倣い動作が実現された.この様な空気の圧縮性を積極的に活用した研究は,空気圧アクチュエータのさらなる応用を促進するものと期待できる.
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