研究概要 |
無中枢的な植物同士のコミュニケーションを行為系から論じる上で、1個体独立した状態と集団でのリズム運動の違い、さらには様々な配置方法での挙動の変化などを明らかにすることは重要であると思われる。そこで本研究ではこの点を明らかにする手始めとして、一定間隔の格子状に配置された複数のマメ科植物の幼根に関して、生長に伴うリズム運動を集団レベルで複数同時に計測できるシステムも開発を行った。計測方法は,最大9本のエンドウの幼根を2[cm]間隔で3×3の格子状に並べ、垂直2方向から5倍の対物レンズを取り付けたCCDカメラで根先端部の画像を取り込み、その画像をコンピュータで処理することにより、根の3次元運動軌跡を測定する。この場合、内部に配置された根が周囲の根によって隠れてしまうことから、カメラの光軸とエンドウの列に角度(26.6°)をつけ、周囲の根の間から覗き見るように内部に配置された根の挙動を観察することとした。また、計測点が生長等で視野から外れるのを防ぎ、かつ個々の根の位置まで高速にカメラを移動できるようCCDカメラが3軸方向に移動可能な装置を試作した。すなわち、前後、左右に個々が動く4台のCCDカメラを計測対象を取り囲むよう1枚のテーブル上の4辺に設置し、リ-ド2[mm]のボールネジと5相ステッピングモータを使用することによりテーブルを上下に駆動させる。テーブル上に設置された前後、左右の移動機構は、リ-ド1[mm]のボールネジと超小型の5相ステッピングモータ(0.16[kg]により駆動される。また、これらは全てパソコンにより制御される。以上により,サンプリングタイム1分で最大9本までの根のリズム運動を計測することが可能となった。さらに,本システムを用いて3本の幼根の挙動を計測したところ、いずれも周期2時間程度で互いに衝突しないように調子を合わせるがごとくリズム運動を行っていることを見出した。
|