FMS(Flexible Manufacturing System)の運用を考える際、各種生産工程間における搬送システムは重要な要素であり、これらのシステムに関し、国内外で多くの研究、開発が行われている。しかし、それらの研究では、2次元平面を移動する自律搬送システム(自律走行車等)に関する研究が主であり、3次元空間を移動する自律走行クレーンに関する報告はされていないのが現状である。天井クレーンは、(1)敷地内の上下方向を移動することにより、敷地面積をとらない、(2)3次元空間を自由に移動することで敷地内に置かれた障害物を回避するなどのフレキシビリティがある、(3)搬送システムを構築する際のコストが少なくてすむなど、2次元の搬送システムに比べてその利点は多く、応用範囲も広いと考えられ、FMSの運用の自由度を高めるためにも、その自動化が望まれる。そこで本研究では、I)移動障害物のリアルタイムでの認識と回避、II)地上を移動する搬送車との協調作業が行える自律走行天井クレーンシステムの開発を行った。 まず、(a)レーザーラインマーカーとCCDカメラを用い光切断法によりオフラインでの障害物の認識を行い、それによって得られた画像データから障害物の位置と高さの情報をもつ環境地図を自動生成するシステム。(b)環境地図から分枝限定法を用い、任意のスタートからゴールに至る最短距離経路や最小エネルギー経路の条件を満たす最適経路を自動生成するシステム。(c)荷位置の情報に着目したモデルの導出およびそのモデルに基づいた搬送制御系を最適サーボ系を適用し、(b)で生成された経路に追従し、搬送中や搬送終了時の荷振れを制御する搬送制御システムを構築し、これらを統合した自律走行クレーンシステムの開発を行った。今後は、リアルタイムでの障害物回避経路の探索をポテンシャル法で行い、地上の移動障害物との協調作業を行えるシステムの構築をファジイ制御などを用いて行う計画である。
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