研究概要 |
超伝導コイルの不安定要因の一つとして、コイル巻線部での超伝導線の動きによる摩擦発熱が挙げられる。本研究では、コイル巻枠と超伝導線の接触における摩擦特性を定量的に検討し、コイルの安定性向上のための基礎的データを得ることを目的とし、本年度は主に以下の二点の研究を行った。 なお、コイル巻枠材料としては、代表的材料であるGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、冷却すると膨張する新機能を有するDFRP(ダイニ-マ繊維強化プラスチック)、同じ新機能を持つDGFRP(ダイニ-マ及びガラス繊維強化プラスチック)を用いた。 1.コイル構造材の摩擦係数の測定: 液体ヘリウム中で交流超伝導線の母材である銅ニッケル合金と、各種のコイル巻枠材料を接触させて(接触力は26N)、30,000サイクルの往復繰り返し滑りにおける摩擦係数を測定した。 その結果、GFRP表面では摩擦係数は0.7〜0.9程度であり、DFRP表面では0.2〜0.3程度、DGFRP表面でも同様に0.2〜0.3程度であった。このように、新機能材料は低摩擦係数であることが実験的に示された。 2.摩擦発熱量の測定: 摩擦係数の測定と同じ装置を用いて、摩擦滑りにおける液体ヘリウムの蒸発量を測定し、摩擦発熱量を実験的に求めた。また、試料の変位量と摩擦力の積により仕事量が算出できるため、発熱量の理論的検討も併せて行った。その結果、蒸発量測定器の較正を適切に行うことにより、測定結果と理論値がほぼ一致することが示された。
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