本研究では、研究計画に示したように、まず表面電位計を用いた絶縁材料表面の電位分布を測定するための測定システムの設計・製作を行った。本年度は、まず1次元的に表面電位を計測可能とするため、ステッピング・モータを用いて、等速で表面電位計の測定プローブを走査させ、一定時間間隔で表面電位計の出力をA/Dコンバータによりサンプリングし、パソコンにデータを取り込めるようにした。 完成した測定システムを用いて基礎データを取り、測定条件を決定した。実験は、静電気により帯電した試料を用いて、プローブの移動速度およびデータのサンプリング間隔を様々に換えて測定を行った。実験の結果、50mm四方の試料の測定では、プローブの移動速度は45mm/s、サンプリング間隔は1msの条件で試料の表面電位分布を十分に測定できることが明らかとなった。 次に、実際に放電により帯電した試料を用いて表面電位分布の測定を行った。試料は表面が滑らかなものと、放電により試料表面が劣化した状態を模擬するために、試料表面をサンドペ-パにより粗したものを用いた。これらの試料に針対平板試料形状で電圧を印加し、放電を発生させ試料表面を帯電させた。実験の結果、表面が滑らかな試料では放電はほぼ中心部に集中して発生し、放電の広がりもある程度大きいことが分かった。これに対して放電劣化を模擬した表面が荒れた試料では、放電の広がりが表面が滑らかな試料と比較して狭く、また放電も数カ所で発生していることが明らかとなった。この結果は、これまでの著者らの研究で得られた、放電劣化が進むにつれて放電電荷量が小さくなる現象を支持している。従って、表面電位分布を測定することにより、放電の広がりや放電状態を評価することが可能であることが明らかとなった。
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