本研究では、高温超電導線材およびそれらを用いた集合導体型パワーケーブルの交流通電による損失を正確に評価する数値計算法を開発し、線材と集合導体の損失特性について、下記に示すいくつかの知見を得た。また、計算結果の確認のため銀シーステープ線材の作製を行った。 今回開発された計算法では、超電導体内部の電流分布を正確に計算し、得られた電流分布を基にNorrisの理論により交流損失を求める。長方形断面の超電導テープに対する計算結果から、長方形テープの損失は、線材の臨界電流付近ではNorrisのthin stripの理論式に一致して、通電電流の減少と共に電流の4乗以上の傾きで減少するが、電流が小さい領域ではthin stripの式からずれ、通電電流の3乗に比例することが明らかになった。また、このずれの大きさはテープのアスペクト比が小さいほど大きくなることが明らかとなった。この結果は、これまでに報告されている超電導テープ線材の損失特性をよく説明している。さらに、集合導体に対する計算結果から、集合導体内部で発生する交流損失は、その大部分が導体を構成するテープ線材のテープエッヂ付近から発生していることを明らかにした。また、円筒型集合導体では、隣り合う超電導テープ間の隙間を小さくすることで、エッヂ付近の磁界がテープ面と平行になり、エッヂ付近の損失発生を小さく抑え、集合導体の損失を低減できる可能性を示した。 今後の研究においては、まず、テープ線材における交流損失特性の全容を明らかにすると共に、実験によってそれらを確認する。その後、集合導体における損失の低減法を具体的に検討する。
|