レーザー誘雷研究では誘雷塔先端にレーザープラズマを生成し、レーザープラズマから上向きリーダを生成し、雷雲まで進展させ雷雲の電荷を中和させることが目的である。高出力の炭酸ガスレーザーを大気中に照射すると高周波加熱理論によって電離されプラズマチャンネルが生成され、放電が形成される。 一方、雷放電におけるリーダの進展過程は、ステップドリーダと呼ばれる断続的な進展を繰り返して進展する。1ステップの時間間隔は約20〜50μsであり、これが数回繰り返して地上と雷雲を短絡する。しかし、レーザの誘導効果は100μsと短く、リーダがレーザプラズマ中を進展する間に先端プラズマチャンネルは誘導効果が消滅することになる。これを解決するための有効な手段として、レーザ照射に時間差を付けてレーザプラズマの生成を行うことが考えられる。本研究ではレーザ照射に時間差を付け、リーダの進展速度と同期してプラズマチャンネルの誘導効果が最も高くなるタイミングにレーザプラズマ生成を行うことによって、リーダの誘導効果が増加することを目的として実験を行った。 実験は棒-平板電極で行った。100kVの直流高圧印加装置を用い、充電用コンデンサー容量は0.2μF、充電抵抗100MΩ、放電抵抗1.8kΩとした。棒電極には正電圧を印可し、平板電極は接地した。ギャップ長は160mmである。棒電極の先端に絶縁物を設置し、それを100J、50nsの炭酸ガスレーザーで照射することによって6cmのレーザープラズマを生成した。その後、50J、50nsのガスレーザーを絶縁物に照射することによって、炭酸ガスレーザーで生成したプラズマの先にさらに6cmのプラズマを生成した。炭酸ガスレーザーとガラスレーザーの照射タイミングを変化させ、その場合の50%フラッシオーバー電圧の変化を昇降法により求めた。炭酸ガスレーザーとガラスレーザーの照射時間を0μsとした場合の50%フラッシオーバー電圧は45kV、10μsの50%フラッシオーバー電圧は48kV、100μsは59kV、300μsは64kV、500μsは75kVとなった。時間差が100μsを越えるあたりから50%フラッシオーバー電圧が急激に上昇する。この結果は最初に炭酸ガスレーザーで生成されたプラズマ中の電子が急激に減少し、100μs程度で放電誘導効果が極端に低下したためと判断できる。来年度はストリークカメラを用いてストリーマ-の進展状態を把握し、最適な時間タイミングを検討する。またガラスレーザーを紫外光レーザーに変更することによって、弱電離での誘導効果を測定する。
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