近年、高速デバイスを実現し得る配線材料として多くの期待を集めているCu薄膜の拡散バリヤには、高温までCuの拡散を抑制し、かつ半導体デバイスの高集積化に伴う素子の微細化のために、拡散バリヤを極薄化でき、更にバリヤ材料自身が低抵抗であることが切望されている。そこで本研究では、Cuの拡散を効果的に抑制する拡散バリヤの候補として、TiNとZrNを組み合わせたTiZrN合金の適用を検討した。TiZrN合金の構成要素であるTiN及びZrNは低抵抗な窒化物であり、これらを合金化した場合にはどちらもNaCl構造であることから、TiあるいはZrがその格子点を置換する形で合金を形成する置換型合金であることが知られている。申請者はこのような置換型合金の場合、従来の3元合金系に比べ抵抗率の増加を極力抑制でき、かつバリヤを合金化することでバリヤ自身の安定性が高められるものと考えた。さらに、バリヤの構造に着目し、アモルファスに極めて近い微結晶状態の構造とすることで、バリヤの結晶粒界を介して生じるCuの速い拡散を効果的に抑制できるものと考え、Cu/TiZrN/Siコンタクト系の熱的安定性を詳細に検討した。その結果、TiZrN合金バリヤはその抵抗率が1000Aで約90μΩcmとその抵抗率が3元合金としては極めて低く、かつその構造は、結晶粒径が50〜80A程度の微結晶状態であることがわかった。さらに、このバリヤを用いたCu/TiZrN/Siコンタクト系の熱的安定性は、バリヤ膜厚を200Aと薄くした場合においても700℃程度までCUとSiとの拡散・反応を抑制し、安定なコンタクトを実現できることが明らかとなった。このことから本研究で用いたTiZrN膜は、従来から切望されていた極薄化した場合においても高温まで安定なコンタクトを実現できる優れたバリヤであることが実証された(2編の論文として投稿準備中)。今後は、組み合わせる材料を変化させたTiVN膜等についても同様の検討を行い(投稿準備中)、置換型合金バリヤの有用性により一般性を見出すことを目的として検討を行う予定である。
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