研究概要 |
ワイドギャップGaN結晶は高出力青色半導体レーザー(LD)を実現する材料として最近最も注目されている。 しかし高品位GaNの作成に最適な基板材料の開発が強く望まれており、これは従来困難とされている青色LDの室温での連続発振実現に最も重要な課題となっている。 本研究では高品位GaN結晶作成に最適な新しい基板材料として(La,Sr)(Al・Ta)O_3 (LSAT)を見いだし、その単結晶化、優れた特性の確認に成功した。 引き上げ単結晶作成法により,直径約25mm、長さ約100mmクラスの高品質LSAT単結晶作成に成功した。 当初,最適な種結晶がなかったため,Ir棒を種結晶に採用し,結晶作成を開始した.得られた結晶から高品質種結晶を作成し,それにより,1インチサイズの単結晶が得られた.GaN結晶基板としての格子整合性を考慮した場合,<111>方位のLSAT結晶が必要となる.そこで作成結晶から<111>方位の種結晶を準備し,<111>に方位制御された1インチサイズ単結晶の作成にも成功した.作成したLSATはわずかに褐色に着色していたが,これは青色領域発光素子用の基板としての応用を考慮した場合,好ましくない.そこで,最適結晶作成条件を検討し,無着色・透明LSAT結晶の作成にも成功した.作成したLSAT結晶の評価を行った結果,以下のような特徴を有することが判明した.1)GaNとの格子不整合性は0.07〜1%(Al_2O_3は16%) 2)熱膨張係数差はAl_2O_3より1桁小さい(GaNのα||=5.75×10^6K^1に対してLSATのα=5.7×10^7K^1,熱膨張係数差は1.3×10^7K^<11>) 3)大型・高品質結晶作成が容易.これにより低欠陥密度を有するGaN薄膜の作成(現状10^7〜10^<11>,GaAsで10^4)が可能となり,長寿命化,耐熱性の向上など室温連続発振青色レーザーの高性能化が実現され,高性能青色発光素子として高密度記録媒体,フルカラーデイスプレイ等,幅広い応用が期待される.現在,LSATへのGaN薄膜作成の検討を進めている. ペロブスカイト型LSATのみでなく,ガ-ネット型結晶も検討を進めた結果,ファラデー効果の高い光アイソレーター応用薄膜作成に最適な新ガ-ネット基板材料の開発にも同時に成功した.
|