Si基板上にエピタキシャル成長可能な直接遷移型半導体β-FeSi_2(Eg=0.85eV)は、発光素子材料として注目されており、SiIC間の電気配線に代わる光接続用の発光素子材料としての可能性がある。光デバイスとして利用する際には、キャリアと光子の両者の閉じ込めが期待されるp-Si/β-FeSi_2/n-Siダブルヘテロ構造の作製が重要である。そこで、我々は、これまで行ってきたSi(001)基板上のβ-FeSi_2エピタキシャル成長技術を生かして、通常のMBE装置によりp-Si/β-FeSi_2/n-Siダブルヘテロ構造を作製することを目的に研究を行った。 まず、n-Si(001)基板上に基板温度470℃でFeを蒸着速度0.1Å/sで蒸着するRDE(Reactive Deposition Epitaxy)法により膜厚200Åのβ-FeSi_2をエピタキシャル成長した。AFM観察によりその表面は膜厚程度の凹凸が見られた。表面を平坦にする目的で、MBEチャンバ内で850℃、30分のアニールを行ったところ、β-FeSi_2膜は島上に凝集した。これは、2つの材料間の格子不整合から生じる歪エネルギーが小さくなるよう、接触面積が小さくなったためである。アニールによりβ-FeSi_2は凝集したものの、その表面は極めて平坦になった。この上に、基板温度750℃でSiのMBE成長を試みた。また、Siをp型にド-ピングするため、Si照射と同時にHBO_2を照射した。Siの膜厚を変えて実験したところ、SiのMBE成長は、まずSi表面から始まり、その後膜厚増加とともにβ-FeSi_2を埋め込みように進行することが分かった。Si結晶内に埋め込まれたβ-FeSi_2は、2つの材料間の接触面積が最小になるようにさらにボール状へと変形した。TEM観察により、Sip-n接合付近に、単結晶β-FeSi_2の埋め込み構造が確認された。
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