研究概要 |
セレン化法を用いたFeSe薄膜の作製と得られた試料の構造評価,磁気特性評価を行った. 1.真空蒸着法によりGaAs基板上に作製したFe薄膜を分子線エピタキシ-装置内でセレン化処理した.基板温度380度以上においてセレン化が確認され,FeSe薄膜を作製することに成功した. 2.オージェ電子分光法により,得られたFeSe薄膜における膜深さ方向のFe,Se各原子の濃度を調べた.その結果,膜中の含有Fe/Se組成比は一定であり、セレン化過程が単なるSe原子の拡散現象ではなく,化合物を形成する過程であることが明らかとなった.このFe/Se組成比はエネルギー分散X線分光法(EDX)より,2/3,あるいは1/3であることがわかり,これらの試料では,バルクのFeSeで安定とされているFe_3Se_4やFe_7Se_8とは異なる構造を有することを示唆している. 2.走査型電子顕微鏡(SEM)による試料表面観察より,得られたFeSe薄膜は多結晶であること,その多結晶粒はセレン化時間が長いほど大きくなることが明らかとなった. 3.振動型磁力計(VSM)によりFeSe薄膜の磁化曲線を測定したところ,飽和磁化は120eμ/cm^3であった.また,面内及び,面内/垂直方向の磁気異方性は極めて弱いことが明らかとなった. これらの研究成果をもとに,平成10年度はX線回折等を用いたFeSe薄膜の詳細な構造解析や,結晶配向性と磁気異方性の関係,薄膜作製条件による磁気特性の制御,などを行う予定である.
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