CaAs基板上に作製したFeSe薄膜の磁気特性を詳細に解析した。 (1) FeSe薄膜の作製にはセレン化法を用いた。作製方法・作製条件や、得られたFeSe薄膜の構造評価、磁気特性評価の結果などに関する詳細は既に平成9年度実績報告書で報告済みである。 (2) 平成10年度はGaAs(001)基板上に作製したFe薄膜のセレン化によりFeSe薄膜が形成される過程における、磁気特性や結晶粒径を検討した。その結果、 ・セレン化が進に伴い(セレン化率の増加に伴い)、走査型電子顕微鏡(SEM)で試料表面を観察することにより計算されるFeSe薄膜の多結晶粒径は、増加することが明らかとなった。セレン化率が10%以下の領域では粒径は100nm程度、セレン化率80%では700nm程度の粒径であった。 ・振動型磁力計(VSM)により測定した試料の飽和磁化、Ms[emu/cc]はセレン化率の増加に伴い減少するが、Fe1原子当たりの飽和磁化は一定であることが明らかとなった。 (3) 本研究課題の遂行により得られた成果を以下にまとまる。 ・セレン化法を用いることにより、FeSe薄膜の作製が可能であることを見出し、また、作製条件を確立した。 ・得られたFeSe薄膜は、膜の深さ方向に対してFe/Seの構成組成比が一定であり、セレン化過程が単なるSe原子の拡散ではなく、FeSe化合物を形成する過程であることを初めて明らかにした。 ・FeSe薄膜の磁気特性評価により、飽和磁化、保磁力、面内異方性、面内/垂直方向異方性、及び、これらのセレン化過程における変化を明らかにした。
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