走査電子顕微鏡で三次元形状を測定する一つの方法として、遺伝的アルゴリズムを用いた三次元再構成法を提案して、数値実験で、走査電子顕微鏡画像の三次元再構成には、試料断面の頂点の座標を並べるコーディング方法にもとづく遺伝的アルゴリズムがもっとも適していることを示してきた。本年度は、評価過程に改良を加えたアルゴリズムを、実際の走査電子顕微鏡画像のラインスキャンへ適用した。また、このアルゴリズムを一般の三次元形状へ精度良く拡張する方法を検討した。 走査電子顕微鏡の分解能を決める重要な要素に、(a) 電子線束のスポットの直径。(b) 入射電子が試料中で拡散する効果の二つがある。(b)による二次電子の試料表面での拡がりは、数nmである。また、(a)のスポット径はレンズの収差などで決まって、数nmから数10μmまで変化する。分解能は、これらの値で決まって、通常、画素の大きさよりも大きい。これまでは、分解能と画素の大きさが一致していた。本年度は、スポット径をガウス分布で近似して、計算で求めたラインスキャンの濃淡値とコンボリューションした濃淡値を評価値の計算に用いた。金蒸着されたポリスチレン・ラテックスの走査電子顕微鏡画像の球の中心を通るラインスキャンを実験に用いた。結果は、ほぼ期待どおりのものが得られた。また、一般の三次元形状を複数の試料断面に分解して、それぞれの試料断面の頂点の座標を順に並べるコーディング方法を用いて、数値実験を行なってきたが、探索領域が広すぎるためか、誤差が小さくならなかった。この問題を解決する目的で、走査電子顕微鏡に取り付けられている二次電子検出器及び反射電子検出器で、同時に撮った二次電子像及び反射電子像から、試料表面の三次元形状が精度良く再構成できないか検討を行なった。
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