研究概要 |
LSIの微細化,高集積化に伴う信号遅延を抑制するための低誘電率層間絶縁膜として,物質として最小の誘電率2.0を示す有機系(C-F結合)材料と無機系(Si-O結合)とをハイブリッド化し,有機系の問題点である耐熱性改善を試みた.製作方法は,大面積化可能で,溶剤廃液による環境汚染の影響が少ないプラズマ支援化学気相堆積法を用いた. C-F原料としてテトラフロロエチレン(TFE)を用い,Si-O原料として耐熱性高分子に見られるNCO基を有するテトライソシアネートシラン(TICS)を用いた場合,100%TICSを用いた場合を除き,Si-O結合とC-F結合とを混合出来なかった.しかし,NCO基の含有率はガス混合比に対応して変化し,その含有率を制御することにより,100%TFE膜の場合の誘電率2.0,耐熱性200℃以下という特性に対し,誘電率増加を2.3までに抑えた状態で耐熱性が300℃まで向上した. Si-O原料としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いた場合には,TFE/HMDSOガス混合比を制御することにより,膜中のC-F結合/Si-O結合含有率の比率を制御でき,ハイブリッド化が可能となった.また,赤外吸収スペクトルから判断する限り,400℃の熱処理後においても膜中結合状態は安定に保たれていた.しかし,誘電率は熱処理前の2.1から3.0に増加した.今後は,誘電率増加の原因を明らかにすると同時に,その抑制手段を開発する予定である.具体的には,高温堆積や成膜時の放電電力を増加させ,誘電率が大幅に増加しない程度に膜の緻密化を図る.また,フェニル基が低誘電率かつ耐熱基であるため,フェニル基を有するSi-O源を用いることを計画している.
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