本研究では、アモルファスシリコン材料の欠陥評価法として我々が新たに開発した手法、変調光電流分光法(MPC)を用いて、「欠陥密度および欠陥準位構造が膜中でどのように変化しているのか」についての詳細な評価を試みる。MPC法では励起波長の選択により、一つの試料において膜中の測定空間領域を自由にかえることが可能である。また、高密度の欠陥を含む表面/界面の近傍領域は光伝導への寄与が小さく、(光侵入長、膜厚がキャリア拡散長〜0.1μmより大きければ)測定結果は表面/界面欠陥によらず、バルク欠陥にのみ高い感度をもつ性質を備えている。この方法を基板材料、成膜条件、膜厚の異なる各種a-Si膜とそれらに外部ストレスを印加あるいは光劣化を生じさせたものに適用することで一連の系統的研究を行い、ストレスと欠陥発生との因果関係の解明を達成することを目的としている。 様々な励起条件のもとまた様々な膜厚の試料についてのMPC測定結果から、荷電欠陥には表面/界面付近でのバンドベンディングの影響が見られるもののその膜中分布は比較的穏やかなものであること、一方、中性欠陥についてはそれと異なり、ミクロンスケールにわたる大規模な変化が起きていることが見いだされた。この変化の原因は、欠陥の状態密度の詳細な解析に基づいて、dangling bond準位とは明らかに区別される別種の深い準位が、基板界面より約1ミクロンの領域に発生していることにあると結論された。膜成長時に誘起される内部応力は基板界面付近に蓄積されていることが知られており、これによって派生する過剰なネットワーク歪みと観測された非dangling bond準位との関連が強く示唆される。
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