研究概要 |
本研究では,窒化ガリウム、窒化インジウムガリウムの赤外領域での波長8〜11ミクロンでの光学定数を決定し、光学フォノン周波数、フォノン振動子強度、ドープされた試料のプラズマ振動周波数の100〜400Kでの温度依存性を求めることを目的とした。本年度は、その第一段階として、全反射減衰(ATR)法とラマン散乱法を用いて、実際の素子に用いられている品質のGaN薄膜の赤外域での光学特性を得ると共に光学フォノンとプラズマ振動の情報を得た。 サファイア基板上に有機金属気相エピタキシ-法により厚さ数μmのGaN層を成長させた試料を用いた。不純物(Si)ドープを行った試料と行っていない試料を用意した。ATRスペクトルに、試料中におけるフォノンポラリトン励起に由来する信号強度の落ち込みが観測された。GaNとサファイアのモードが存在するので構造の多いスペクトルが観測された。また、ラマン散乱スペクトルにも、サファイア基板とGaNのフォノンが観測された。ATR理論スペクトルを実験スペクトルに一致させることで、LOフォノンの振動周波数と振動子強度、ダンピング周波数、GaN薄膜の膜厚および高周波誘電率が決定された。GaNの異方性を無視した場合の赤外領域での高周波誘電率の値は5.32と決定された。さらに、キャリア密度が十分大きな試料ではプラズマ振動周波数とプラズマ振動ダンピング周波数が得られた。プラズマ振動ダンピング周波数値の値は他の化合物半導体に比較すると数十%以上大きな値で、ダンピングパラメータは、他の化合物半導体に比べ数倍以上大きく、結晶性に改善の余地があることをうかがわせた。 以上の内容の一部は、1997年10月に徳島で開催された国際会議"Second international Conference on Nitride Semiconductors"において発表された。
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