研究概要 |
本研究ではマクロレベルの電気的特性に加え,ナノレベルの電気的侍性を走査型複合プローブ顕微鏡(SPM)を用いて測定・評価することにより,強誘電体メモリーの実用化における最大の問題点である各種の劣化現象を解明することを目的としている。本年度は(1)強誘電体薄膜作製プロセスの確立,(2)マクロレペルの特性評価,(3)SPMによるナノレベルの電気的特性の評価技術の確立を目的として研究を推進し,以下のような知見を得た。 (1)SiO_2/Si及びMgO(100)基板上にRFスパッタ法で作製した各種電極(Pt,Ir,IrO_2,Ir/IrO_2)上にMOCVD法によりPZT薄膜を作製し,いずれの基板・電極上においても良好な強誘電性を示すPZT薄膜が得られることを確認した。さらにステップカバレッジ特性の評価を行い,従来広く使用されてきたPt電極にかわりIr電極を用いることで,PZT,電極及び基板間の相互拡散・化学反応が抑制され,良好なステップカバレッジが実現できることを明らかにした。 (2)Ir系電極上に作製したPZT薄膜について,疲労特性及び相互拡散の下部電極膜厚依存性を調べた。その結果,下部電極膜厚が薄くなるにつれ,相互拡散の抑制効果が薄れるとともに疲労特性が悪化することがわかり,疲労現象の一因として相互拡散が関与していることを明らかにすることができた。 (3)AFMの電流同時測定モードにより,PZT薄験表面の形状及び電流分布を同時に観察した。リ-キ-なPZT薄膜(10^<-6>A/cm^2@1V)では電流は主に結晶粒界を流れていたが,リ-キ-ではない試料(10^<-8>A/cm^2@1V)では電流分布がほとんど観測されなかった。PZT薄膜の電気伝導には結晶粒界が関与しており,リ-ク電流を減らすには結晶粒界の高抵抗化あるいは結晶粗界そのものをなくす単結晶化が有効であるとの結論が得られた。
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