研究概要 |
近年,マイクロマシンの要素技術である電磁型アクチュエータは,より小型化あるいは薄膜化される傾向にあり,反磁界の影響をどう抑えるかが,アクチュエータ開発の重要なポイントとなっている. 本研究では,この問題を解決するために,アルマイト磁性皮膜を改良し,直径0.4μm,長さ300μm,アスペクト比750の針状の磁体を,3μmの間隔で膜面に垂直に無数に並べたナノワイヤ皮膜を開発し,これを利用して,小型平面アクチュエータを試作することを目的とした. 以下に,研究概要を示す. (1)二段階陽極酸化法による反磁界の低減 従来のアルマイト磁性皮膜は,皮膜表面に高密度に分布した磁極による静磁的な相互作用による反磁界を有するため,膜面垂直方向に低磁界で磁化することが困難であった. 本研究では,針状磁性体間の間隔を決める陽極酸化時の極間電圧を2段階(40V/80V)に制御し,針状磁性体の間隔を従来の2倍に広げ,表面の磁極密度を1/4に低減した. その結果,膜面垂直方向に磁化した場合の反磁界係数を,従来の限界値0.14から0.04に低減することに成功した. (2)反磁界係数の決定因子の検討 針状磁性体が,非磁性皮膜中に分布した数式モデルを,本研究で作製するような高アスペクト比(100以上)の場合に適用し,膜面垂直方向に磁化した場合の反磁界係数が,皮膜中の磁性体充填率で近似できることを解析的に示した.また,二段階陽極酸化法により,皮膜中の磁性体充填率の異なる磁性皮膜を作製し,その磁化曲線から,上記の予想の妥当性及びさらなる反磁界係数低減の可能性を示した. (3)Coナノワイヤの間隔制御 二段階陽極酸化法により,従来の2倍の間隔を有するCoナノワイヤを作製した.さらに,このCoナノワイヤが,高アスペクト比(150),低反磁界係数(0.04)を有するため,非常に柔軟であり,かつ,強い形状異方性のため,外部から加えた磁界の方向に向くことを,磁化曲線より明らかにし,本ナノワイヤを用いたマイクロアクチュエ一タの実現性を示した.
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