平成9年度は、下部NbN電極をプラズマ窒化して形成したNbNxを障壁層としたNbN/NbNx/NbNジョセフソン接合の作製についての検討を行った。実験としては、反応性dcマグネトロンスパッチリング法により成膜したNbN薄膜を上部及び下部電極にして接合を作製し、特性評価を行った。その結果、臨界電流密度Jcが20kA/cm^2から40kA/cm^2という高Jc接合が得られた。この結果は、接合の高性能化につながる。一方、接合の電流-電圧特性におけるヒステリシスの大きさは、障壁形成時の窒素ガス圧に大きく依存することがわかった。窒素ガス圧を15mTorrと低くしたとき、接合は4.2Kにおいてヒステリシスの無いオバーダンプ特性を示し、ガス圧を高くしていくとヒステリシスのある特性を示した。臨界電流Icと常伝導抵抗Rnの積IcRnの値は、0.95mVと比較的高い値を示した。しかし、オーバーダンプ特性を示す接合は、再現性に乏しく、また、臨界電流の磁場依存性から障壁層がかなり不均一になっていることが推測された。それに対し、ヒステリシスのある接合は、再現性があり、また、障壁層が均一に形成されていることがわかった。さらに、この結合は、測定温度を高くしていくと、オーバーダンプ特性となった。IcRn積は、8Kで0.85mVと充分高い値を示した。これらの結果から、10K動作を考えたとき、4.2Kでヒステリシスのある接合が極めて有効であることがわかった。 一方、化学的機械的研磨(CMP)による層間絶縁層SiO_2の平坦化技術の検討も行った。 その結果、研磨レートの再現性等としては、その誤差が10%程度であることがわかった。また、実際にCMPを用いて接合を作製し特性評価を行った結果、高品質な接合特性が得られ、CMPプロセスによる接合特性への影響がないことが確認された。
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