フェムト秒光パルスを高温超伝導体に照射することにより、超伝導電流を高速変調し、その変調に伴う超伝導ループでの磁束生成を実現することによる新しいタイプのメモリーを提案し、単純な構造によるメモリーを試作し、基本動作の確認に成功した。酸化物高温超伝導体としてYBa_2Cu_3O_<7-δ>を採用し、レーザーアブレーション法により膜厚約150nmの薄膜を成長し、フォトグラフィー法と湿式エッチングにより、約30μm直径の穴を持つ、幅約100μmのラインによりループを形成した。転移温度以下に冷却したメモリーに、一方向から電流を印可することにより、ラインに対して平行に電流を流し、ループの一部(直径約40μm)にレーザーパルスを照射し、書き込み電流を止めた後に、光励起によるテラヘルツ電磁波放射により、約60cm離れた点から、ループに書き込まれた磁束の検出を行った。その結果、書き込み電流と、レーザーの照射位置により制御された磁束がループに書き込まれていることを確認した。書き込み現象は、超伝導電流の変調で説明され、ループ内でのカイネティックインダクタンスに均衡がとれている場合、あるいは不均衡になっている場合、および雪崩的変調が起こっている場合の3種の動作モードが存在することを発見した。このメモリー動作は、光の強度や書き込み電流に大きく依存することから、時系列フェムト秒光信号を磁束量子の生成により電気的な信号に変換する光インターフェイスや、フェムト秒の2次元的信号を検出する画像メモリーなどへの応用が可能であることを提案した。
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