フォトリフラクティブ結晶を介する光増幅過程において観測される光双安定現象を利用して、画像入出力可能な画像メモリ及び論理演算素子を構成することを目的として研究を継続している。本年は、フォトリフラクティブ結晶を利用した、画像メモリシステムの特性の評価を中心に研究を行った。結晶としては鉄がドープされたニオブ酸リチウム単結晶(LiNbO3:Fe)を用いた。干渉縞間隔を約2.5μmとすることで、ホログラム応用の画像メモリシステムが構成できた。干渉縞間隔を約0.2μm違えることで、同じ結晶材料に多重に画像を蓄積・再生できることを実験的に証明した。実験では、10枚の画像を蓄積・再生することができた。また同時に、構成したメモリへのアクセスによる記録画像の劣化の様子を評価し、劣化の発生しにくいアクセススケジュールについて検討した。その結果、読み出し画像のコントラストの劣化を、約半分に低減することができた。 さらに、ホログラムメモリの読み出し光学系に、チタン酸バリウム単結晶(BaTiO3)で構成した位相共役鏡を配置することで、連想メモリーシステム構成の特性の評価実験も行うことができた。今年は、2枚の画像を蓄積し連想メモリシステムを構成した。構成したシステムに、蓄積画像の内の一方の画像の一部を入力することで、完全画像を出力する連想能力を確かめることができた。 システムへの画像の入力素子として、液晶空間光変調素子を導入した。現時点では、画像演算メモリシステム中にて使用することはできなかったが、空間光変調素子の動作確認として、コンピュータ生成ホログラムを表示させてその光変調特性を評価することができた。表示させたホログラムは、遺伝的アルゴリズムやシュミレイテッドアニーリングなど、探査的最適化手法により設計し、良好な再生像が得られることが解った。 今後は、今年の成果を踏まえて、画像入出力可能な画像論理演算素子へと発展させて行きたい。
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