本研究は、インターネットの経路制御プロトコルであるBGPのメッセージを観測することによって、インターネットの経路制御上の不安定さの解析することを目的としたものである。 IXに接続しているISPの一部から経路の提供を受け、BGPのkeep alive以外のメッセージをその時刻とともに記録した。当初は予想されていなかったBGP flap dampeningの普及によって、遠方の経路の状況を観測することは困難になったが、国内のISPによって生成されている経路に関しては、集約されている経路に比べて集約されていない経路の変動が多く、ISPと顧客の間の回線等にその原因があるものと推測される。そのため、経路集約が歴史的理由で進んでいない学術系ISPに対して多くの経路変動が観測された。 中規模なISPでは広報する経路数が少なく、ほとんど更新されないことが多い。また、同じ経路が同一AS Path属性で繰り返し広報されていることも観測されており、これはBGPの問題であると考えられ、経路変動をもたらすものではないが、ルータに不要な負荷を与えている。そして、特に海外の経路に関して、経路のup/downよりも、AS Path属性の変更が多いことが観測された。これはflap dampeningによって頻繁に発生する経路のup/downはマスクされ、伝搬させないことによる結果であるが、インターネットのトポロジが比較的richである一つの証拠でもあると考えられる。
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