研究概要 |
本研究の今年度の成果は、以下に示すよう3つに大別できる. 第一の成果は,秘密鍵暗号系に基づく認証システム,特にブロック長Kを含む認証システムに対して,本質的な2つの攻撃であるなりすまし攻撃と改ざん攻撃の2つの攻撃を考慮したとき,それらの攻撃の成功確率がともにKの指数関数で0に減少する認証符号化法を提案したことである. 第二の成果は,元来,白黒2値の画像の秘密分散法として有用であったNaorとShamirにより1994年に提案された視覚複号型秘密分散法(Visual Secret Sharing Scheme,VSSS)を,カラー画像や濃淡画像に適用できるように拡張したことである.提案したVSSSは束と呼ばれる代数構造に基づき,任意の色数や輝度値をもつカラー画像や濃淡画像の(k,n)秘密分散を可能にする.すなわち,この手法は,1枚の秘密画像とパラメータk,n(2【less than or equal】k【less than or equal】n)が与えられたとき,秘密画像をシェアと呼ばれるn枚の画像に分割し,n枚のシェアのうち任意のk枚を重ね合わせることによって秘密画像を復元する.k-1枚以下のシェアからは秘密画像に関する情報は全く漏れることはない.提案したVSSSは例えばコンピュータのlogin時の個人認証の 第三の成果は,情報理論の分野で近年大変盛んに研究されている系列の有歪再帰時間を,有限アルファベットをもつ離散無記憶情報源とガウス性無記憶情報源の2つの場合に関する概収束定理を与えたことである.有歪再帰時間とは,無限の長さをもつ系列の有限長さの文字列が与えられたとき,その文字列と歪D以内に入る文字列が出現するまでの最小の文字列間の間隔を指す.有歪再帰時間に関して概収束定理を与えたことは,シャノン理論の基本的な問題に1つの解を与えたことになり,問題を拡張して秘密鍵暗号系に基づく認証システムの問題として捉えたときに,1つの考え方の基盤を与えていると考えることができる.
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