研究概要 |
本年度は,新たな計測装置である超分解能時空間チャネルサウンダの作成に取り組んだ.ネットワークアナライザにおける参照信号部分を原子発振器による絶対同期で置き換え,受信機と送信機の間の参照信号の受け渡しを省く構造を採り入れた.キャリア周波数としては,次々世代のマイクロ波移動通信システムを踏まえ,また免許の取りやすい5.8GHz帯を採用した.遅延時間測定にはマルチキャリア信号を用いて,周波数操引と同じ効果を期待する.従来の相関型チャネルサウンダでは疑似雑音系列を用いているが,マルチキャリア信号を用いることで平坦な周波数特性が期待できる.到来方向測定には2次元アレーアンテナを採用する.この場合,各素子間の位相差がもっとも重要な情報となるので,アンテナ素子のスイッチによる切替え等は採用せず,各素子からの信号を中間周波段に変換した後に,並列サンプリングを行うこととした.このようにして取得された周波数および空間に対する3次元データを,本研究で新たに提案した3次元ユニタリESPRIT法を用いて処理することにより,3次元パラメタの同時推定が初めて可能となった.残念ながら,本報告書までにはサウンダの試作は終了していないが,受信部・送信部とも高周波およびベースバンドのフィルタを除き,ほぼ完成している.また,2次元アレーアンテナが理想的に動作するための較正法を新たに提案し,現在,ネットワークアナライザを用いたサウンディング実験でその有効性の確認を進めているところである.
|