研究概要 |
本研究では小型基地局アンテナで伝播路を制御するため,基地局アンテナの偏波と指向性に着目し,この2つのパラメータを用いて伝播路を最適にすることである.平成9年度においては,偏波と指向性をセルエリア制御に利用するため基礎的実験として,ピコセルの代表的な例である廊下や部屋内での伝播特性を,複数の伝播路において偏波と指向性をパラメータとして測定し,伝播路制御のための基礎データを取得した.その結果,室内の伝播路においては断面形状に応じた最適な偏波面が存在することを見出し,伝播路の状況に応じた最適な偏波面が存在することを実験的に確認した.さらに,送受信点の距離が数十メートル程度のピコセル環境下においては送受信点間の伝播路のパスが数本に限られることに着目し,廊下を無限長の一様なコンクリートで囲まれた伝播路として近似してレイトレース法を用いたシミュレーションを行い,実験結果の妥当性を確認した.シミュレーションにより伝播路断面形状と最適偏波面の検討と行った結果,横長の断面形状を持つ伝播路では送信点から数十メートルの範囲では垂直偏波が支配的であり,縦長の断面形状の伝播路では水平偏波が支配的であることを明らかにした.この結果はトンネルなどの伝播路の長距離推定から得られる結果と逆の関係になっており,本研究により始めて明らかにされたことは注目すべき成果である.また,基地局アンテナの指向性については指向性のナル点の方向によりカバーエリアが大幅に変化することを確認し,指向性によるセルのカバーエリア制御の基礎的なデータを得た.また,室外においても偏波による伝播特性の相違と指向性によるセルエッジでの電界強度の変化を確認しており,次年度の研究において偏波と指向性によるカバーエリアの総合的な制御について検討を行う.
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