昨年度の研究(奨励研究(A)、No.08750447)に引き続き、時間領域有限差分(Finite Difference Time Domain:FDTD)法により、大規模なメモリを搭載していない計算機でも光ファイバなどの長尺の経路における波動伝搬解析が可能となるアルゴリズムを開発する研究を行った。 本年度で得られた成果は以下のようにまとめられる。 (1)非線形分散性誘電体材料から成る2次元光導波路構造を伝搬する包絡線パルスを解析するためのFortranによるプログラムに、パルス波が計算領域の終端に近づいたときに領域を伝搬方向へシフトさせるアルゴリズムを取り入れた。 (2)上記(1)のプログラムを用いて、シリカ・ファイバを想定した場合の包絡線ソリトンが1000μmまで伝搬する様子を数値解析した。 (3)計算領域の四周に施す境界条件について、パルス波が伝搬方向に広がる傾向にある場合はその伝搬軸と平行な境界にはPerfectly Matching Layer(PML)を、また垂直な境界にはMurのAbsorbing Boundary Condition(ABC)を用いる必要がある。その理由は、パルス波形データを解析領域の終端から入射端にコピーするときに、PMLによって打切られた波形をもとに計算を再開するので、打切られた部分から大きなリプルが発生するのを防ぐ為である。これに対してABCは滑らかに波形を減衰させるので、このようなリプルは生じない。 現在、非線形方向性結合器の解析に本手法を適用することを試みている。
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