研究概要 |
今年度に行った研究成果は以下の通りである. (1)カラー画像を対象として,2次元近傍での高い相関性を有するヒルベルト走査を利用した画像圧縮手法を開発した.これは,ヒルベルト走査に沿って得られた1次元データに対して,多値のランレングス符号化を行うものである.この特徴は,濃度変化が激しい部分を積極的に除去し,滑らかな部分をできるだけもとのまま保存することである.開発した画像圧縮手法の圧縮効率と処理速度との関係を,従来手法と比較して明らかにした.7種類の高精細カラーディジタル標準画像データ(ISO/JIS-SCID)を使って,JPEGとの比較実験を行い,画像によっては,本手法が優れたり,あるいはやや劣ったりするが,視覚的にはほぼ近い画質であった.また,文字画像に対して本手法とJPEGとの比較実験を行った結果,JPEGによる圧縮画像の場合,文字の周辺にノイズが発生しているが,本手法ではほとんど発生していないことがわかった.本手法の圧縮処理にかかる時間は,JPEGと同程度であるが,復号処理は,JPEGよりも約7分の1と短時間で復号できることがわかった. (2)(1)において開発した画像圧縮手法を利用し,動画像を対象としたヒルベルト走査による画像圧縮手法の開発を行った.これは,フレーム間差分画像に対してヒルベルト走査の近傍情報を保存しやすいという特徴を利用したものである:動画像データMiss Americaを使って,約1/60の圧縮率に対して平均SN比が35dBが達成できている.従来手法MPEG-Iエンコーダと圧縮効率(約1/55の圧縮率で平均35dB)に関して比較を行い,本手法は,同程度の平均SN比に対して圧縮率が若干優れていることを確認した.
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