本研究は、移動体通信に有効なビームチルトアンテナの設計理論に関する研究である。 移動体通信においては、周波数の有効利用のため小ゾーン方式が採用されている。この方式では、基地局用アンテナに、主ビーム方向を傾けるビームチルトアンテナが設置される。このビームチルトは、負荷装荷アンテナで実現できる。本研究では、チルト角とアンテナのパラメータの関係式を導出し、所望のチルト角を条件として与えることで、その特性を実現するパラメータが直接的に決定されるビームチルトアンテナの設計理論を確立し、ビームチルトアンテナの設計をより容易に、確実に行えるようにするものである。 本研究の実績として、下記の項目が挙げられる。 (1)ゾーンの大きさに対応して、様々な大きさのビームチルトを実現できるよう、2個の負荷を用い、0から30°の範囲で所望のビームチルトを実現する負荷インピーダンスの決定方法を確立している。 (2)負荷1個または2個用いたアンテナで、指向性利得、サイドローブレベルと負荷インピーダンスの関係式を導出し、これらの特性を条件として与えることで、それらの所望の特性を実現する負荷インピーダンスの決定方法を得ている。また、負荷1個の場合、理論的に指向性利得の最大値を求める方法を得ている。 (3)設計理論を用いて、終端短絡同軸線路を負荷インピーダンスとして用いたビームチルトアンテナを試作し、ほぼ理論どおりの実測値を得ている。
|