本研究では、仮想環境を用いた情報通信のための基礎技術として、実環境を撮影した実画像を仮想環境に取得し、仮想環境で表示する手法を開発することを目的にしている。本年度は、撮影者が携帯VTR等で撮影した多視点画像列から実環境の3次元モデルを構築する手法について、前年度に引き続いて研究を行った。本年度得られた成果は以下の通りである。 1. 前年度までに開発した、複数視点からの多視点画像から被写体形状の3次元モデルを自動的に獲得するために遺伝的アルゴリズムを適用した手法に改良を加え、カメラの相対的配置が未知な場合においても自動的にカメラ配置を推定し、モデル形状を自動推定できる手法を開発した。ここでは、カメラ間の幾何学的位置関係とカメラの射影変換パラメータに関する情報を含む基礎行列をカメラ間について自動推定し、これに基づいてモデル形状の自動推定を遺伝的アルゴリズムにより行うものである。 2. ハンディカメラにより撮影された画像列を複数のブロックに分割し、ブロック毎に因子分解法を適用して対象の部分形状を復元し、入力画像のテクスチャ情報により決定される表面形状の信頼度を考慮して、復元された部分形状を融合する手法を開発した。この手法では、単に部分形状のみを用いて複数の部分形状を融合する従来の手法に比べて、入力画像のテクスチャの一貫性を用いているため融合された結果に残る誤差が少ないという特徴がある。この結果、物体の全周からの完全な3次元形状を復元することが可能になった。
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