研究概要 |
本研究の目的は,VLSIのマスクレイアウトの再利用手法を確立することであるが,今年度は特に,アナログ回路をも扱うことのできる汎用的な手法について考察した.アナログ回路は,デジタル回路とは異なり回路パラメ一夕に応じた素子の変形度合が大きいため,レイアウトの再利用にあたっては,既存のレイアウトを大きく変形しなければならない場合もあると思われる.そこで,レイアウトの再利用という立場から広く配置改善処理について検討した. 具体的には,近年新たに開発された方形系列対に基づく方形配置(パッキング)手法に着目した.この手法は,配置設計に関しては良い結果が得られているが,配線を含めたレイアウト設計全体を考えると十分な結果が得られているとはいえないため,さらなる改善を目指した. まず,従来の方形パッキング手法の細部を見直し,従来手法では取り除くことのできなかった冗長な情報(方形間の制約)を無視する手法を提案した.計算機実験により,処理速度,配置設計結果ともに従来手法を上回る結果が得られることを確認した. 次に,配線設計等を含めたさまざまな最適化要求に対応できるようにするため,柔軟な最適化に向いているといわれる遺伝的アルゴリズムを方形パッキング手法に適用した.そのとき必要となるコード化法および遺伝的操作法(評価,選択,交差,突然変移等)について,数種の方式を提案・検討し,計算機実験により比較を行った.従来手法に匹敵するほどの結果はまだ得られていないが,実験過程および実験結果の解析を通して,提案手法の問題点,すなわち遺伝的操作のうちの評価と交差がうまく機能していないということを明らかにした.これらの改善については,今後の課題としたい.
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